二ノ宮の家 of 東京の建築家と建てる家 自然素材のデザイナーズ住宅 連合設計社市谷建築事務所

自然素材で建てるデザイナーズ住宅 東京の建築家と建てる家づくり

rengoDMS連合設計社市谷建築事務所

グッドデザイン賞受賞


photo : Koshi Tarumi

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二ノ宮の家



「しとしとと降る雨の中でも深い庇がつくる、輪郭を失うことのない確かなかたち。
微妙な陰を生むやわらかい反射光が壁や天井に映し出す豊かな表情。 ワビサビとか渋さではなくて、そんな風土が豊かなで楽しい暮らしに映えるような住まい。」 これは、風土に根ざした福井ならではの住まいを、今の時代感覚に翻訳したモダンな建築として模索しようとしている堀川社長の想いに応えるために、プロジェクトに手をつける前におぼろげに考えたテーマです。

特に冬のどんよりとした空気感の中で、楽しく豊かなくらしを支える「すまい」はどのようなものが相応しいのだろう? そんなことを考えながら設計がはじまりました。

コに字の家型

3 IMG_0043.JPG南面を最大限生かすために西と東の外壁は敷地いっぱいにして軒を出していません。 東西の妻壁には必要最小限の窓だけです。雨当りが厳しいので仕上げは屋根と同じガルバリウムでつくりました。 逆に南北はほとんどが開口部。1200㎜の深い軒を出しながら、南北の風を通し、南の陽光を取込みます。
屋根と隣地境界に建てた2枚の外壁でできるシンプルなかたちを純化するために外壁の小口は軒先とそろえて、より明快なコの字の門型にしました。 曇りがちな北陸の冬の空の中でもはっきりとした陰影と輪郭を保ちます。 年間を通して雨や雪が多く、夏は無論、冬でも湿度の高い風土の中で、深い庇とよく風の通る窓の在り方に重きを置いてきた「住まい工房」の伝統。
その正統な考えを踏襲しながら明快なかたちになることを試みています。

北陸のコートハウス

2 IMG_0040.JPG快適なくらしにとって風通しがまずはとても大切なこと。
大きな窓や風の道を工夫したり、雨を気にせずに開けられるために深い庇を設けることが想起されますが、実は何より大切なのは家にいる人が窓を開け放してもくつろげる様な周辺環境との配置に気を配ることです。
大きな窓を南にとっても、結局カーテン締め切りになっては元も子もありません。
今回の敷地が南北に細長く、南側にガレージを配置させることで自然に中庭を持つコートハウス形式になりました。 ガレージはあくまでも平屋ですから、中庭には陽光がたくさん入ります。
植栽と広いデッキを設けた中庭はプライベートガーデン。他人の目を気にする必要はありません。
全開引込の木製建具がリビングを屋外へとつなぎ、室内の活気が外へと溢れだします。
低く抑えた軒に守られているので、蒸し暑い梅雨時でも引戸を開け放てます。
部屋には涼しい風が行き渡り、風情のある雨音を聞きながらの休日のコーヒータイムもいいかもしれません。 ご主人のご要望でもある露天風呂的なバスコートも中庭に配置。夏はやっぱりビールでしょうか。

北陸でのコートハウス形式がもたらす恩恵は計り知れない力があるようです。

街並みをつくる佇まい

1 IMG_0024.JPG交通機関の少ない地域では共通のことですが、道路に並べられたカーポートがつくる景観に疑問を感じることはないでしょうか?
今回ケースのように母屋と一体で計画することはひとつの解決方法となります。
外観としても2階建て部分はセットバックしているので、ほとんどガレージの平屋部分しか意識されません。
平入りの低い屋根が落着いた街並みに貢献します。
塀で遮断するのとは違い、奥行きのある平屋が街路と中庭を仕切っているので、距離感と植栽をうまく利用することで街との心地よい関係をつくるように心がけました。 門型のフレームは中庭まで貫通していて、切取られた植栽の緑が街路に開かれています。

光を取込む工夫

11 IMG_0076.JPG冬の曇りがちな空模様でも、家の中にはひかりが溢れるようにしたい。
これはオーナーの要望でもありましたが、北陸の地にあって普遍的な要望ではないでしょうか? 軒下空間を明るくするためにガラス屋根を使っています。
長いアプローチには白い壁に垂木が影のリズムを刻みます。
バスコートは楽しみの場所であると同時に、物干し場でもあります。
天気に左右されずに洗濯物を干す時間は気持ちの良いものになってほしいもの。
深い軒で部屋がくらくならないように、奥行きのあるリビングには高窓を設けて吹抜けから日が射すようにしています。
スリットのような細い吹抜けからは印象的なひかりが射しこみ、季節や時間帯によって様々な表情を壁に映し出します。ひかりをうける妻壁に余計な窓は設けず、その陰影が部屋を彩ります。
せっかく設ける窓には最大限その効果を発揮してもらいたいものです。
キッチン背面の高窓は天井面を、和室の地窓は床のタタミを、各階のトイレの縦スリットは直行する壁面を照らします。 しっかりとひかりを受止める天井や壁面を併せて考えることで、弱い光であってもその微妙な陰影や反射光をより効果的に得ることができるのです。

広がりとのびやかさを生む水平天井

IMG_0083.JPG1階は同じ高さで一連なりに水平天井が張られています。
部屋の間仕切り建具は天井いっぱいの高さにするか、欄間にガラスを入れるかのどちらかで、たれ壁は設けません。
これは部屋同士のつながりを大切にするための工夫です。
天井いっぱいの建具はむしろ動く壁。
壁が消えるのですから、連続感は最大限生かされます。
欄間ガラスはトイレなどの建具に取付ける明りとりを建築化したものでもあります。
天井の高さは2.2mとしました。
一般的な高さに比べると低く感じるかもしれませんが、水平方向へののびやかさが強調され、落ち着いた場の雰囲気をつくります。
ひとの感覚は相対的なものですから、部屋の広さは高さに反比例して感じる傾向があります。
一方、室内の間仕切りだけでなく、このルールは中庭に向けての屋外の開口部にも適用しています。
中庭はこの家にとってはもうひとつのリビングです。
軒先へとつながる天井面が内外の境界を消してくれます。

引戸を主体にしてフレキシブルで連続感のあるプランニングをするのであれば、こうした3次元的な工夫は欠かせません。風通しの良さや家族の気配を感じる連続感が、空間的な豊かさを伴ってはじめて、より質の高いくらしの豊かさに通じると思います。

白いキャンバスとくらしの豊かさ

10 IMG_0070.JPG白というのは、現実の色のことではありません。
空白や余白。
プランニングから窓の採り方やディテール至るまで、工夫を凝らしている多くの部分は、住み手のくらしを支える下地をよりシンプルで飽きの来ないものにするためでものです。
線を消すために窓枠や巾木を細くしたり、サッシのアルミの桟を見せない工夫をすることも、きれいな余白をつくるためにしています。
残された余白が美しければ美しいほど、住まい手の立居振る舞いがひきたち、思い思いにしつらえる家具や小物が映えるのです。
料理を引き立てる器は装飾的なものより、簡素なものの方がおいしそうではありませんか?
家は住まい手が思い思いのくらしを描ける、そんな白いキャンバスになってほしいと考えています。

勝見邸_Section_AA.pdf勝見邸_Plan_1F.pdf勝見邸_Plan_2F.pdf

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