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南には田んぼの向こう側に千曲川があり、せせらぎが聞こえ、その奥には荒々しい崖地が眺められる。北東にはおおらかな横から見た浅間連峰を望むことが可能で、四季折々の移ろいそのものを全方位的に、ダイレクトに感じられる風景に溶け込む建築である。
斗薮 (とそう)とは 煩悩の塵を払い、衣食住の執着をはなれて、修行すること。
家に求められた精神は、できうる限りの日常のいらない要素を精査し、吟味し、住まいの上で無くすことであった。その単純化された空間に明らかな中心性、集約性を感じさせるため、方形という屋根の形式が選択された。この正方形でX軸Y軸の差を持たない空間は、外に対しても、内に対しても四方正面性を持ち、隠す心を持たない。
開口部の取り方には二つの方法を採用していて、外部空間ないしは風景に対して先進性を持つ出窓を出角にまわすという凸部形式の開口部と、風景を切り取って内部化する受容性のある凹部形式の開口部である。
内部空間は、建具を引くことによってひとつながりになる一室空間とし、使用する人の属性を問わず全人的に解放される空間としている。
一方、主座がないのは家というものの中心性を失うことになるが、南北の眺望を一手に獲得できる位置まで、家の中心を平面的に偏心させた板壁と囲炉裏が主座の位置を明示している。
座禅の間は孤独を楽しむ空間として一室空間とは完全に切り離し、一畳間という小さく、浅間山という一点に集約させる空間となっている。
20坪というこの小さな家は、単に広さを獲得することで家の価値を高めるのではなく、ランドスケープを視覚的に家の内部に取り込み、日常のいらないものを精査することによって生まれる"住まい"の本質的な空間のあり方を提示している。
斗薮庵(とそうあん)
ワールドフォトプレス 建築家が手掛けたモダンな和の空間「和の小住宅」掲載
Architects: 吉田桂二 + 戎居連太
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